師の恩(1)

老い先が短くなると、昔の事が思い出されます。中でも私の場合は、先生にお世話になったことが色々思い出されます。

私の家は貧乏でした。父は東京で毎日新聞で働いていましたが、結核を患い、戦争中もあって、田舎に疎開しました。戦後、父母が2人で八百屋を始めましたが、なかなか軌道に乗らず、苦労しました。給食費が期日までに払えず、時々遅れることがありました。その間は、先生が黙って立て替えてくれました。それだけでなく、修学旅行も欠席届を出したら、先生が費用を払って参加させてくれました。

中学校を卒業したら、当然、就職する予定でした。日立製作所に給料を貰いながら、勉強もできる中卒者の工員養成校があり、生徒数人で受験した夜、引率してくれた体育の先生が、突然、家に来て、学費は奨学金が下りれば賄えるのでぜひ私を高校に進学させてやって欲しいと親を説得してくれました。(私は体育が苦手で、先生の覚えは良くない筈なのですが。また、何故受験した夜だったのか疑問ですが。)